急性腰痛(ぎっくり腰)の治療経過

激しい痛みで寝起きもままならない急性腰痛(ぎっくり腰)は、やってしまった人にとって大惨事でしょう。海外の急性腰痛治療ガイドラインでは、ほとんどの急性腰痛(ぎっくり腰)は、2〜4週間以内に改善すると書かれていますが、1日も早くいつもの生活を取り戻したいとお考えのはずです。

過去に数多くの急性腰痛(ぎっくり腰)を治療してきた経験では、2回から3回で治療を完了するケースが大多数です。要する期間は1週間が最も多く、期間中に2回の治療というのが普通です。2回目の治療で経過が良ければ、それで急性腰痛(ぎっくり腰)治療は終了になります。2回目治療後に、まだ痛みが3割以上残るケースでは、もう一回治療を追加します。

まれにですが、2回目来院時に検査したらほとんど改善していないケースに遭遇することがあります。その多くは、日常の活動における注意事項がうまく守れなかったり、不用意な動作で傷が開いてしまうといったことが原因でしたが、なかには治癒を妨げるそのほかの要因が隠れていることがあります。

傷ついた組織の修復には、コラーゲンの再生が重要ですが、その再生力がもともと弱いと、ぎっくり腰の治りも非常に悪くなります。コラーゲン再生は、線維芽細胞という細胞がやってくれますが、あまり動いていない組織の線維芽細胞は、活性度が低下しているため、いざ働こうとしてもすぐには活動できません。

別な要因として、ストレス状態にある人は、ストレスに抵抗するホルモンがたくさん分泌されて、体の中で酸化が進みます。酸化を防ぐ抗酸化物質が大量に消費されます。腰部の損傷部位でも、組織修復に伴って酸化が進みますので、そこでも抗酸化物質が消耗されるのですが、すでにストレスに使われているため、十分コントロールすることができない可能性があります。

その辺も含めて、急性期の活動や生活のしかたも指導していますので、しっかり守っていただくと、回復も早いでしょう。

重症腰痛例でみられる男女差

姿勢が腰痛の痛みや生活への影響力に関連するといわれますが、それは女性ではいえても、男性はまた違うようです。

ポルトガルの大学で地域住民を対象としたパイロット研究では、男性170余名、女性310余名について、矢状面立位姿勢と問診およびSF-36による腰痛評価の関連を調査しました。

その結果、男性では矢状面アライメントの違いによる腰痛の重症度には、関連が診られませんでした。女性では、骨盤傾斜角と仙骨傾斜角が大きい場合、それらが中等度の女性に比べて腰痛が重度となるリスクが高いことが認められました。また女性の矢状面垂直軸高値群は、低値群と比べて身体的QOLスコアがもっもも大きな差がありました。

研究者は、「一般成人における非特異的腰痛の原因をスクリーニングするツールとして、矢状面立位姿勢の有用性は限定的だ」と述べています。

急性腰痛治療後の増悪・不快感について

急性腰痛、いわゆるぎっくり腰は、カイロプラクティックによって速やかな改善ができる症状のひとつです。ごく希にですが、治療翌日になって痛みが増悪したり、不快感を訴えることがあります。

増悪したケースの特徴は、発症当日の来院でやっと動けるくらいの重症度が多いようです。不快感出現ケースでは、発症後2週間以上痛みが続いている症例でみられるようです。

痛みの増悪では、治療後に指示した生活上の注意が守れていなかったり、不意な動作などが悪化の原因として多くみられます。不快感を訴えるケースは、痛みに恐れや不安感を持ち、安静にしたがる患者さんが少なくありません。

注意したいのは、圧迫骨折や脊椎終板損傷のケースです。症状は、椎間板由来の腰痛と非常によく似た反応を示しますが、同じように治療すると、半日以内に増悪することがあります。

また、悪性腫瘍の骨転移などの場合は、患部へ直接手技を施しても、反応しないか、増悪を見ることが多いようです。しかし、間接的な治療で一時的に痛みが軽減するため、患部を直接治療しない主義の治療者にとっては、初診の検査で見落とすと、適切な医療処置を受ける機会を遅らせることにもなる、難しい問題となります。

国際基準のカイロ教育では、これらのようなケースもしっかりと評価できるだけの学習がなされ、必要なときはすみやかに専門医に紹介することを徹底しています。

 

 

腰痛の主な原因は腹筋か?

腰痛の原因として、よく「腹筋が弱い」ということが言われています。背部の筋肉は、意識しなくても自然に使われていますが、腹筋は意識しないと収縮しないため、弱くなりやすいとされています。

しかし、腹筋を強化しても腰痛は改善されないことが分かってきました。

背部の筋肉でも、腸肋筋、最長筋、棘筋といった表層筋は、回旋や伸展といった運動に関わりますが、深部の筋肉は腰椎の固定に使われ、これが弱くなったり硬くなると腰痛の原因となります。

また、腸腰筋、大腿直筋、脊柱起立筋、大殿筋、ハムストリングスの柔軟性が低下しても腰痛が起きます。

なかでも見落とされがちなのが、大殿筋の重要性です。日本人は、大殿筋を使うのが苦手な民族的特性があります。とくに歩くことが少なくなった現代社会では、大殿筋の出番がとても少なくなっており、ほとんどの人が十分使いこなしていません。

大殿筋が弱い人は、歩き方も変わってしまいます。効率的に歩くには、片足で立った上で、重心を前に推し進めることができるかどうかにかかっています。そのとき、大殿筋が主導してパワーを発揮します。

大殿筋が弱い人は、かわりにハムストリングスを使って歩くようになります。すると、膝をしっかり伸ばせなくなるため、大腿四頭筋も活動が増加します。その結果、腿の裏が硬く、膝も硬くなり、姿勢の不良化につながることになります。

 

カイロプラクティック 一般向けの定義

WFC世界カイロプラクティック連盟が、1999年の5月に一般向けにカイロプラクティックの定義をまとめました。それによれば、

「カイロプラクティックとは、筋骨格系の機能・構造的な障害と、それが及ぼす神経系の機能異常、ひいては健康全般への影響を診断、治療、予防する専門職である。脊椎マニプュレーション(アジャストメント)を主とした徒手治療を特徴とする。」

となっています。少し解説すると、カイロプラクティックが専門とする分野は、筋肉や関節といった運動器が正常に働けるようにすることで、運動器の障害が神経の働きに悪影響を及ぼして健康を害さないか調べて治療したり、予防することです。とくに、「カイロプラクティックは専門職である」と述べられているように、単に治療技術としてではなく、受療者の健康全般に関わる プロフェッショナルであることが強調されています。

カイロプラクティックの特徴は、伝統的にアジャストメントと呼ばれる脊椎を調整する技術で、脊椎に直接に早く小さな動きを加えることで、安全に動きを改善することができます。

手技療法による危害事例が、マスコミによって報道されていますが、日本のケースを調査すると、正規のカイロ教育を受けていない無資格者による事故であると分かりました。カイロが法制化されていない日本では、必要な安全教員基準を満たしていないカイロ施術者がほとんどであり、それがカイロの安全性に影を落としています。本来のカイロは、事故が皆無とはいいませんが、世界的に見ても医療事故全般のなかで、その危害報告は少数例しか見あたりません。

カイロは、腰痛や頚部痛などをはじめとする運動器の障害に対する有効性が確認されている、数少ない療法のひとつであり、安全に受けることができさえすれば、大きなメリットがあります。

そのためにも、ぜひ日本でも法制化されることを望んでいます。