脊柱管狭窄症の手術
脊柱管の手術がもっとも進んでいるのはアメリカです。アメリカの医学会誌の脊柱管狭窄症手術についての記事では、次のように述べています。
加齢による脊柱管狭窄症の痛みは、次のような方法で治療することができます。
・神経圧迫を起こしている骨増殖部分の手術
・ふたつの脊椎を接合する手術
・脊椎の一部分を切除する手術
手術の効果についての研究では、その効果が複雑な手術がより簡単な療法に対して大きな優位性があることを証明できなかったということです。さらに、手術が複雑になるほど合併症のリスクが高くなる傾向にあることも分かりました。脊柱管狭窄症手術の合併症には、
・心臓発作
・脳卒中
・肺炎
などがあり、合併率は5.6%です。このように、複雑な手術のほうが効果が高いというインセンティブがないにもかかわらず、その実施割合が年々高くなっていることはご存じでしょうか。
JAMA調査研究者ののDeyo教授は、このように複雑な手術が増えてきた背景に、金銭的なインセンティブの存在を指摘しています。
単純な外科手術であれば、費用は600ドルから1000ドル前後ですが、複雑な手術はその10倍の費用がかかります。
また、「良さそう」というだけの理由で、明確な根拠のないまま医師も患者も複雑な手術を選ぶ傾向にあることも否めないでしょう。
医療資源には限りがあります。侵襲性が高く、また費用も高い医療を実施するには、それなりの科学的な証拠に基づいた費用対効果の検討が求められます。患者に良い情報を提供して手術の選択肢を提示している病院では、一般的により少ない侵襲、よりリスクの少ない安価な手段を患者が選択しています。
(National Public Radio. To see more, visit http://www.npr.org/.より翻訳抜粋)
脊柱管狭窄症の手術の動向
単純な減圧術から複雑な脊椎固定術へ
- 2002年から2007年までの5年間の調査では、複雑な脊椎固定術は15倍増加しています。複雑な脊椎固定術の平均入院費用は80888ドルで、単純な固定術では23724ドルと比べ3倍の費用がかかります。手術による生命に関わる合併症は、複雑な脊椎固定術では単独の固定術と比べて3倍も合併症リスクが高いことが分かりました。
- JAMA. 2010 Apr 7;303(13):1259-65.
- Trends, major medical complications, and charges associated with surgery for lumbar spinal stenosis in older adults.