ケガなどによる軟部組織損傷の急性期は、炎症、運動機能障害、浸出液、使用低下といった問題が発生します。そこで、急性期には患部を保護し、かつ強く可動性のある瘢痕組織の形成を目的とした治療が必要になります。

そのためには、最初の24〜48時間のあいだは、炎症を起こしている組織を固定して安静を保ち、PRICEによる炎症のコントロールをします。場合によっては、モビライゼーションやマッサージなどで浮腫や疼痛のコントロールが有効です。

48時間以上の安静は、急激に増殖する患部の結合組織が周囲へ癒着したり、可動性が小さく脆弱化するリスクを高めるので、炎症や痛みに悪影響がないような運動を開始することが望まれます。そのために、イリタビリティをチェックしなければなりません。イリタビリティは、「痛みの強さ」「痛みの閾値」「痛みの持続」三要素を0〜3で数値化します。「強さ3」「閾値3」「持続3」のイリタビリティ最大時は、運動させることができないので、安静を要します。強さや閾値が高くても、患部への介入で持続がなければ積極的な介入を行うことができます。イリタブルな状態であっても、関連部位の健常な機能を維持する治療は行うことが望ましく、その際は患部保護に必要な措置をとります。

急性期の積極的な介入には、他動運動、モビラリゼーション、セッティング、マッサージなどがあります。他動運動は、関節内の循環改善と可動性維持に有効です。モビライゼーションは、疼痛緩和と軟骨の代謝改善に有効です。セッティングは、筋ポンプによる循環促進とアクトミオシンの滑走性維持に有効です。マッサージは循環促進と癒着の防止に役立ちます。

出展 運動療法大全

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