オーストラリアの理学療法士であるPeter O’Sullivan先生の慢性腰痛に関する論文のアブストラクトを紹介します。
腰痛は、ごく普遍的だが自己限定的な状態である。腰痛が本来予想される治癒期間を過ぎても解消せずに慢性化したときに問題となる。慢性腰痛の85%は診断がつかず、「非特異性腰痛」に分類される。放射線による画像診断を用いても、この腰痛のメカニズムを必ずしも推測はできない。現在のところ、慢性腰痛は本質的に多因子的であることが広く受け入れられている。しかし、腰痛に影響を与える可能性のある解剖学的、身体的、神経生理学的、心理社会的要因の有無や優位性については、個人により異なる。そこで、慢性腰痛を障害の根底にあるメカニズムに基づいたサブグループに分類することは、適切な管理を行うために重要だと考えられる。
慢性腰痛は、3つの大きなグルーブに分けることが提案されている。第一のグループは、障害の根底にある病理的プロセスが痛みを起こしており、患者の運動応答は適応的である。第二のグループは、心理社会的要因が痛みを起こす障害の機序となり、患者の対処や運動制御戦略が本質的に適応的ではない。最後のグループは、慢性腰痛患者の大きなグループとして、痛みからの逃避動作を特徴とする運動障害を示すか、痛みの誘発を特徴とする制御障害を示すものがある。
これらの疼痛性障害は主に機械的に誘発され、患者は一次的に身体的、二次的には認知による補償に対する適応障害を呈する痛みの機序となる。これらの患者には、脊椎安定性の過剰や欠如が痛みの根底にある。これらのグループへの特定の分類に基づく理学療法による介入は、障害を解消する可能性のある身体的あるいは認知要因の療法に影響を与える。2つのケーススタディでは、患者の運動とその制御の障害に関わるメカニズムとその管理に関わる個別のアプローチの概略を説明する。
これらのアプローチを支持するエビデンスが増えているが、完全に検証するためには更なる研究が必要である。
Diagnosis and classification of chronic low back pain disorders: Maladaptive movement and motor control impairments as underlying mechanism Peter O’Sullivana,b, a Body-logic Physiotherapy, 146 Salvado Rd, Wembley, WA 6014, Australia b School of Physiotherapy, Curtin University of Technology, Perth, Western Australia Received 3 April 2005; accepted 9 July 2005