筋損傷は筋組織の機能的および構造的な変化を特徴とする。一般に筋損傷は、筋硬直から筋断裂までの4段階に分別される。
筋硬直/肉離れ(I−II度)
- 構造的変化なし
- 筋トーヌス上昇
- マイクロトラウマ
- 毛細血管損傷
- 間質内の液体貯留
- 炎症細胞の遊走
筋繊維断裂(IIIA度)
- 軽度の構造的変化
- 弾性限界を超えた伸長
- ほとんどが筋腱移行部
- 筋繊維断裂
- 血管損傷、内出血、浮腫
- 筋内膜および周膜損傷
- 炎症反応
筋束断裂(IIIB〜Ⅳ)
- 重度の構造的変化
- 筋束の連続性損失
- 筋膜、血管、神経の損傷
- 血腫、浮腫
- 炎症反応
筋損傷からの再生には、食細胞による清掃と筋繊維再生および瘢痕組織を形成する修復相と瘢痕組織の吸収と再編成、あるいは筋機能回復のための組織再構築がおこる再構築相がある。
受傷後3日目に血管新生が始まる。この時期に十分な血管が作られないと、筋繊維も再生できない。
受傷後10日は新生結合組織が筋の安定を決定する。その後は、筋繊維自体がその役を担う。
治癒過程がうまくいけば、筋繊維は2週間で再生するが、その大きさは不完全である。この時期以降の適切なトレーニングは治癒を促進する。
筋繊維再生には、栄養、年齢、トレーニングが影響する。
炎症によるフリーラジカルを処理する抗酸化物質(ビタミンCやE)は有効だが、同時に成長因子の放出シグナル物質でもあるため治癒過程を妨害する可能性がある。したがって、抗酸化物質は受傷3日目までに使用するにとどめたほうが良い。(Goldfarb 1999, Howatson & Someren 2008)
数日間にわたるタンパク質投与は、損傷規模を減少させる。(Howatson & Someren 2008)
I〜II度損傷では、受傷後早期のモビリゼーションで怪我の拡大を防ぎ、痛みを緩和できる。重度な損傷であえば、3-5日間固定したい。
III度以上の損傷では、受傷後3-5日後には断裂した繊維先端が瘢痕組織でつながれ安定するので、持久運動としてのランニングからトレーニングを開始すると治癒を早めるが、それより早いトレーニング開始は瘢痕組織の過度な形成をもたらす可能性がある。(Jarvuinen et al,2005)