セラピストが取りうる治療戦略には、主に3つの種類があります。
ひとつは、「症状を変化させる」戦略です。この戦略を採用するメリットのある臨床所見としては、
- 強い機能障害
- 不安定で変化しやすい症状
- 中程度以上の痛み
などがあります。具体的な治療手段には、
- 方向指向性モビライゼーション、マニプュレーション、エクササイズ
- 積極的休養
が挙げられます。
またひとつには動作のコントロール戦略があります。その臨床所見には、
- 中程度の機能障害
- 安定して変化の少ない症状
- 中程度以下の痛み
があります。治療手段は、
- モーターコントロールエクササイズ
- 柔軟性エクササイズ
- 安定性エクササイズ
が挙げられます。
もうひとつ、機能の最適化戦略があります。その臨床所見は、
- 小さな機能障害
- コントロール下にある症状
- たまにしかみられない痛み
があります。治療手段は、
- ストレングス/コンディショニングエクササイズ
- 持久性トレーニング
- 個人の仕事やスポーツに特化したトレーニング
が挙げられます。
例えば急性腰痛で痛みが激しく、歩くこともままならないようであれば、まずは痛みを軽減して歩けるように症状を変化させる戦略が第一選択となります。毎朝起きてからしばらくの間腰に痛みがあってまっすぐに伸ばせないが朝の支度は全て可能であるようなケースでは、動作のコントロール戦略を選択します。治療により症状の大半が消失したけど、時々ひどくはない痛みがでたり、特定のことをしているときに痛むような場合は、機能の最適化戦略になります。
出典 Alraily et al,2017