外傷性捻挫後の仙腸関節は繊維化することが多い。外傷により関節内に滑膜炎が生じると、疼痛誘発テストが陽性となる。この時点では、仙腸関節にかかる荷重を軽減して治癒を促すが、ほとんどの肢位で関節に圧力がかかるため、実際に免荷は難しいが、患側を上にした側臥位で股関節と膝を枕で支えるのが最もよい。立位における杖の使用は、免荷に役立つ。受傷後、数週間以上痛みを訴えている場合は、仙腸関節が線維化している可能性がある。寛骨が仙骨に対して前方回旋していることが多く、反対側に比べて後方回旋可動域が減少し、垂直方向への負荷課題でアンロックがみられない。

ベクトルモビライゼーション

膝立背臥位で、腸骨内側面とPSISを触診する。反対の手で膝を支えて股関節を屈曲し、寛骨の後方回旋をバリヤーまで誘導する。バリヤーに達したら、股関節内転内旋を更なるバリヤーまで加える。このときに、そけい部痛や大腿骨頭の前方変位がみられたら、股関節周囲筋に対するリリースが必要になる。バリヤーに達したら、大腿骨長軸方向に後外側へ力を加えて仙腸関節を離開させる。ベクトルを変化させて最も影響のある方向を見つけ、その方向に持続的な圧をかけながら、患者にお尻が左右に開くように柔らかくして背中をリラックスするイメージングをさせる。

マニプュレーション

仙骨と寛骨が複雑に障害を受けている場合に行う。患側を上にした側臥位で、LS間が完全に回旋する位置まで胸腰椎を回旋させ、頭側の手でL5と仙骨を固定し、反対の前腕で仙腸関節後面が離開するよう、骨盤帯を通る垂直軸まわりに寛骨を内旋させ、スラストする。

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