モビリティとスタビリティ、多くのケースで両機能にわたって問題が混在しています。そうした場合に、どちらから先に治療を始めるのがいいのでしょうか。

FMSなどがモビリティを優先するのに対して、PNFは腰部骨盤のスタビリティを高めて遠位のモビリティを作り出すコンセプトをもっています。 同じようにMcGillは、体幹のスティフネスを高めることで股関節の可動域改善に寄与できるとしています。( McGill et al, Hip joint range of motion improvements using three different interventions, 2012.)また、Kiblerも遠位の関節を守りながら動かすために、事前にコア周囲筋が活動するようプログラムされ、近位から遠位という力の発揮パターンを作り出しているといっています。(Kibler et al,  A. The role of core stability in athletic function, 2006.)

FMSのようにモビリティに優位性を置く立場は、カイロプラクティックやオステオパシーのような手技療法とコンセプトが共通しています。つまり、モビリティが低下した関節や筋の固有感覚入力が低下したり変化することで、運動認知や知覚が混乱を受け、スタビリティにも影響を与えるという考え方ですね。

このように、モビリティとスタビリティを対峙させた見方をすると混乱が生じます。そもそも体の運動機能は、モビリティが優先して求められる場所と、スタビリティが優先される場所があります。モビリティ優先の場所は、足・股・肩各関節と胸郭です。これらの場所でモビリティが低下すると、膝関節や腰椎骨盤部、頚椎が代償運動を行って場合によってはハイパーモビリティとなることもあります。反対に、スタビリティを求められるのが膝関節と腰椎骨盤、頚椎です。これらの場所のスタビリティ低下は、アウター筋の緊張を高める代償が生じて股関節や胸郭、肩関節のモビリティを損なうことがあります。

そこで、動作を観察して、各関節運動が合理的に連動しているか、全体的な運動パターンに着目することで、モビリティとスタビリティをリンクした運動機能とみなすことができます。

例えばスクワット動作を横から観察したときに、脛や大腿の傾斜度(足関節と股関節のモビリティ)や上肢の位置といったモビリティ要素と、腰部骨盤の屈伸パターンのようなスタビリティ要素の両者を統合してクリニカルリーズニングを行うことになります。

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