患者指導
最初の2、3日は、伸展あるいは側方移動の自己矯正を頻繁に繰り返すよう指導する。症状が重度であれば、臥位安静及び一定間隔で短時間歩行をする。歩行の目的は、腰椎伸展を促して椎間板あるいは結合組織の膨隆を軽減する。治癒までの間は、屈曲動作をできる限る避け、伸展した姿勢を保持するよう努力する。
治療介入
伏臥位で段階的な自重による伸展をおこなう。伸展を増大させるごとに5分から10分間その姿勢を保持することで、椎間板の水分や腫脹を減少できる。最終的に両手を伸ばした姿勢で骨盤を懸垂させることができるまで続行する。伸展中に症状の末梢化が見られたら即時中止する。
側方移動が見られる場合は、立位あるいは側方移動側を下にした側臥位で他動的な矯正を行う。症状の中心化が見られたら、伸展を開始する。
運動感覚、安定化のトレーニングと基本的な動作
症状のコントロールができるようになったら、トレーニングを開始する。無痛な範囲で骨盤傾斜運動/背臥位、坐位、四つ這い、伏臥位、側臥位、立位。伸展で終了すること。
腹横筋活性化のためのドローイン・マニューバ
四つ這い、膝立背臥位、伏臥位、半起座位、座位、立位で行う(四つ這いが最も容易)。
筋が体幹を取り巻いていることを説明し、呼吸をさせながら腰のくびれを内側に引き込んで静かに臍を窪ませる。脊柱は中間位を保つ。ASISの内側を触診して筋膨隆が見られたら腹斜筋が作用している。腹横筋が作用すれば平坦な緊張を感じる。できるだけ腹斜筋を使わないよう指導する。骨盤後傾、下位肋骨の広がりや下制、胸郭の持ち上がり、腹部の膨隆が起きないよう指導する。
多裂筋活性化トレーニング
伏臥位または側臥位で、棘突起外側の筋を触診しながら、患者に筋を膨らませるよう指示し、各分節で筋収縮により硬くなるのを確認する。多裂筋を促進するため、ドローインと骨盤底筋法を用いる。あるいは、側臥位で胸郭や骨盤を使った回旋抵抗運動を行う。自己トレーニングとして、骨盤中立位の座位で、両手の指を棘突起沿いに当て、わずかに体を前傾させると、多裂筋の収縮を感じることができる。
頚部の段階的負荷による安定化トレーニング
臥位から開始し、坐位、ジムボール、背もたれ立位、立位と段階的に進める。頭頸部は軽度前屈、長軸伸長を保つ。頚部前弯を維持できなければ、ロールを首の下に置く。背臥位で上肢の外転、外旋、挙上、対角線の動作を行う間、脊柱の中間位を保つ。複数回反復できたら、負荷をかけて行う。伏臥位では、外旋、肘を曲げて水平伸展、挙上、肘を伸ばして水平伸展を行う。
腰部の段階的負荷による安定化トレーニング
屈曲の安定化トレーニングは、膝立背臥位でドローインを維持したまま、片膝を開く、片足はマットにつけたままもう一方を持ち上げる、片足はマットにつけたままもう一方を伸ばす、片足はマットにつけたままもう一方の膝を伸ばして持ち上げると三段階おこなう。それができるようになったら、今度は片足を90度持ち上げて両手で支えたまま、さらに両手の支えなし、最終段階として両脚同時の運動を行う。伸展の安定化トレーニングは、四つ這いでドローインしたまま、片側上肢挙上、片側下肢をマットにつけたまま伸展、片側下肢を伸ばして挙上、片側上肢と反対側下肢を挙上、伏臥位で片側下肢を挙上、両下肢挙上、両下肢と上肢挙上を行う。
持久力の獲得
脊柱を中間位で維持しながら数回の運動を反復できるレベルで、1分間反復運動できることを目標とする。達成できたらウェイトを使用し、反復回数を減らして筋力強化を重点とする。
安定化トレーニングの注意点
安定した脊柱中間位を維持できないと感じたら、速やかに運動を中止して段階を下げる。制御できないまま運動を続けないこと。
等尺性運動および動的運動
安定化筋の持久力がついてきたら、等尺性運動及び動的運動プログラムに移行する。安定化筋が十分機能できないのに移行すると、症状が悪化する。日常動作や労働、スポーツ動作に重要なプログラムである。
頚部の等尺性運動
座位で頭部を前方、後方、側方から両手で固定し、頭を手に押し付ける。あるいは振り向く。
頚部屈筋の動的屈曲
背臥位で顎を引いて頚部を丸めてマットから持ち上げる。胸鎖乳突筋で代用するようなら、クッションで肩と首を支えた位置から行う。
頚胸以降部のトレーニング
壁を背にして立ち、頭と壁の間でボールを保持したまま上下に動く。うまくできればジムボールに座り、ボールを転がして背臥位になるようにゆっくり脚を進める。頭で支える位置まで脚を進める。支える位置を、胸上部と頭で交互に移動する。両腕の運動あるいはウェイトを持つことで、抵抗の増大へと進行させる。
胸部及び腰部の等尺性収縮と安定化
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