連続するR-R間隔の差の二乗の平均値の平方根で、迷走神経緊張度の指標と言われているrMSSDは、

・特殊なソフトウェアなしに簡単に計算できる

・心臓-副交感神経変調を反映する

・HFパワーなどのスペクトル分析に比べてより高い信頼性を示す

・短時間で評価可能

・呼吸の影響を受けにくい

点で、多くのフィットネスアプリが利用している。HRVをガイドとした持久力トレーニングは、好気的体力の改善のために優れていることが示されている。(Herz. 2015 Mar;40 Suppl 1:61-9. doi: 10.1007/s00059-013-4037-2. Epub 2014 Jan 19. [Individualization of exercise load control for inpatient cardiac rehabilitation. Development and evaluation of a HRV-based intervention program for patients with ischemic heart failure]. [Article in German] Behrens K1, Hottenrott K, Weippert M, Montanus H, Kreuzfeld S, Rieger A, Lübke J, Werdan K, Stoll R.)

HRVの高い数値が良く、低い数値が悪いとされ、ベースライン以上にある時より強度の高いトレーニングをすることは、より大きな成果を引き出すことは明らかである。また、激しいトレーニングや競技の後に、HRVの急激な低下が起こることも報告されている。したがって、低いHRVは急性疲労を反映するものと考えられている。これらの解釈は妥当なものであろうか。

競技前の選手には、HRVの低下が観察されることがあるが、これは興奮や不安の高まりの結果であると考えられる。(Int J Sports Med. 2013 Dec;34(12):1087-92. doi: 10.1055/s-0033-1333720. Epub 2013 Jun 5. Effect of a training week on heart rate variability in elite youth rugby league players. Edmonds RC1, Sinclair WH, Leicht AS. Morales, J., Garcia, V., García-Massó, X., Salvá, P., Escobar, R., and Busca, B. (2013). “The use of heart rate variability in assessing precompetitive stress in high-standard judo athletes.” Int J Sports Med, 34 , 144-151.)

また、レース当日には、迷走神経レベルが低い方がスプリンターに有利であるという報告もある。(Merati, G., Maggioni, MA, Invernizzi, PL, Ciapparelli, C., Agnello, L., Veicsteinas, A., and Castiglioni, P. (2015). “Autonomic modulations of heart rate variability and performances in short-distance elite swimmers. European Journal of Applied Physiology, 115(4) , 825-835.)

となると、低いHRVが必ずしもパフォーマンスの低下を予測するものであるとは限らないということになる。

有酸素運動能力のアップは、心臓-副交感神経活動の増加と関連して、HRVが増加する。HRVの変化が、インターバル走行記録にどう関連するかを5週間のプログラムで検証したところ、中間点でHRV週間平均値の増加を示したアスリートは、反対の傾向を示すものよりパフォーマンスが改善していた。(Flatt, AA, and Esco, MR “Evaluating individual training adaptation with smartphone derived heart rate variability in a collegiate female soccer team.” J Str Cond Res. In Press.)

しかしながら、オーバートレーニングによるパフォーマンス低下が見られたにもかかわらずHRVの増加傾向が見られたという報告があり(Le Meur, Y., Pichon, A., Schaal, K., Schmitt, L., Louis, J., Gueneron, J. and Hausswirth, C. (2013). “Evidence of parasympathetic hyperactivity in functionally overreached athletes.” Med Sci Sports Exerc, 45(11) , 2061-71.)、必ずしもHRV増加傾向が良いとはいえない。

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