カイロプラクティックは、これまで伝統的なアイデンティティを保持してきました。しかしそれは、カイロプラクティックが広がった20世紀から現在までの100年が経っても、主流医学からの理解を得て、医療システムの中でひとつの文化的な権威を確立することは叶っていません。


現在、主流医学はエビデンスを重視し、あいまいさや不確実性に不寛容になりつつあります。カイロプラクティックが医療システムの中で立場を確立するとしたら、主流医学では認められていない伝統的アイデンティティではなく、科学的な証拠があり、医学的な認識に反さない専門的なアイデンティティから生まれる新たな職業モデルを持たねばならないでしょう。


有望と思われる新たなモデルの条件は、

  • 主流医学に対し一貫性があり、理解され、信頼を得られる
  • 科学的証拠に基づき、かつ将来の証拠の変化に対応できる
  • カイロプラクターの能力の範囲にある
  • 臨床的成果の証拠がある
  • 医療市場にニーズがある
  • これまでのカイロプラクティックとトレーニング、歴史、免許を共有できる


でも、従来の伝統的モデルで患者はカイロプラクティックから恩恵を得てきたのに、その事実を軽く見てはいまいか?という意見もあるでしょう。たしかに、私たちはD.D.パーマーがもたらしたサブラクセーション理論を発展させ、多様なタイプの患者にカイロプラクティックを多起用して成果を挙げてきた自負があります。そうした成果を、主流医学者は恣意的に無視し、偏見を持ってカイロプラクティックを見ていることが原因だと考える人もいるでしょう。


しかし、社会からの信頼をどうやって高めていくのかを冷静に考えると、その時代で主流となった専門職に文化的権威を社会が与えて、権威者が発信する正当性の認識に基づいているかどうかを、社会が評価して信頼が生まれます。


伝統的モデルに足りないのは、主流医学に対し一貫性があり、理解可能で、社会の信頼を得られる評価です。
社会の信頼を得るには、カイロプラクティックの伝統的な原理を徹底的に周知する活動をすればいい、というカイロプラクターもいるでしょう。それを信じる人がいると思いますが、反発する人も大勢いない保証はありません。カナダのカイロプラクターは、サブラクセーションとアジャストについて一般にマーケティングすると、「サブラクセーション」という用語に対する反発と、サブラクセーションがあると感じた場合に医師に相談したいという国民の欲求の増加を発見しました[ Ryan J,2000]。


では、諸条件をクリアできる新しいモデルはなんでしょうか。
次回は、その新たな職業モデルについて解説します。

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