従来型のセラピーでは、生体力学や運動学的な要素に注目してきました。そして、そのやり方は一定の効果を上げて、患者さんからも評価を受けることができました。でも生体力学や運動学は、ヒトの一側面をみているに過ぎません。ヒトをはじめとして生物は多様な生存戦略をもって生きています。セラピストとして、私はできるだけ多くの生存戦略を理解し、それにアクセスしたいと思います。そうすることで、複雑な問題を自分の都合で単純化して非効率的な問題解決法しか立案できない弱い立場から立ち上がることができます。
例えば、頚をまっすぐにしていれば楽だけど、いつも傾いてしまうから痛みが起こるという問題があるとします。従来の見方だと、頚部でなにか誤った力の伝達が発生しているのではないかと疑ってアライメントやバイオメカニクス、神経筋コントロールを評価したりします。
これに、視覚や平衡感覚といった空間認識に関する機能評価を加えたらどうでしょう。頚で起きている力の伝達の誤りが、空間認識のエラーと結びついていることが分かります。それは、生体力学を改善したら良くなるのでしょうか。
従来型のセラピーは、様々な研究で短期的効果は認められても、長期的効果は結果が出ていません。なぜでしょうか。
一歩足を踏み出し、新たな視点を獲得できないセラピストは淘汰されていくと思います。