多くの症状や痛みは、組織への負荷の結果として末梢組織に分布している侵害受容器が刺激されて生じます。生物にとって痛みは、多岐にわたって影響を及ぼし、ときには組織への負荷がなくなった後でも症状が残る場合もあります。このような痛みによる生物学的な影響を治療するためには、どこから施術をはじめたら良いのかを考えてみましょう。

痛みを引き起こしている原因となる組織への負荷は、体のアライメント、動作のしかた、筋活動といった様々なパラメータを変化させることで最適化できます。そうしたパラメータを変化させる治療法やテクニックが、古今東西たくさん考え実践されてきましたが、どのパラメータにアプローチするのが他のことよりも優れているというエビデンスは、いまのところありません。エビデンスが与えられるまでは、個人の状況に応じて優先すべきアプローチを考慮することが、良い結果を生むものと信じています。個人による状況の相異を特定したり、症状をサブグループに分類する方法としては、

  • 疼痛誘発及び緩和テストで症状の特徴を抽出して分類する方法
  • 身体アライメントや動作に基づいて分類する方法
  • 治療パターンに対する反応から症状の特徴を見つける方法
  • 痛みの責任組織を特定する方法
  • 治療に対する反応と責任組織を組み合わせる方法

といったものがあります。また、アライメントや動作を評価するがサブグループに分類せずトレーニングの対象選択に利用する方法も存在します。疼痛誘発テストで症状の特徴を分類する方法としては、Gery CookのSFMAがあります。ここからスタートする利点は、改善すべき負荷の方向を知ることができることです。アライメントや動作を分析する方法には、JandaのクロスシンドロームやSharmannの運動機能障害症候群、O’SullvanのCFTなどがあります。その利点は、負荷の発生機序を理解できる点です。治療パターンに対する反応を調べる方法には、DelittoのTBCアプローチがあります。痛みの責任組織を特定する方法には、Petersen 、両者を組み合わせた者にMcKenzieのマッケンジー法があります。いずれも治療対象を特定し治療効果が得られる患者のグループを特定できる利点があります。

こうした種々多様な考えや実践は、視点は違えど相反するものではなく、様々な領域に及ぶ個人の特異性に根ざすものなので、どれからスタートしても良いのですが、わたしは疼痛誘発テストで特定組織の特徴的な症状が見つかれば、それを責任組織としてアライメントや動作から推測した治療に対する反応を確認しながら修正を加えていくという手順を踏みます。

例えば、3日前に突然発症した膝下への放散痛のない右腰臀部痛に対して、屈曲++、伸展++及び右側屈+による疼痛、立位で軽度前傾及び左傾斜が観察され、反復伸展及び右側屈による疼痛緩和が見られたとき、治療は右側屈及び伸展制限のある腰椎分節を限局できればその分節に対して直接的に伸展、右側屈マニプュレーションを加え、再度疼痛誘発テストで評価し、伸展及び右側屈による疼痛が軽減しているなら、屈曲左側屈症候群として伸展と右側屈動作の制限要素あるいは屈曲と左側屈のスタビリティ、あるいはそれぞれの筋活動動員から包括的な治療プログラムを考えることができます。

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