機能的な動作をするには深層と表層の筋が協調することが不可欠である。そのために、深層筋システムの共同収縮を表在筋の活性化が必要な課題と結びつけることが目標となる。LPH複合体機能障害がある場合、体幹の運動から股関節運動を分離することが必要なことが多い。そこで、最初は近位関節の制御に焦点を当て、機能的パターンの中で残りの遠位関節の動きが加わるように進めていく。動きをコントロールできたら、筋力強化を加える。プログラムは、コントロールが失われた方向と分節にフォーカスした課題をデザインすることが重要である。不安定面を使うと、長時間の過剰な筋活動する状況を作らなくても、姿勢のコントロールの関する問題点が明らかにできる。

  • 力の伝達不全側の仙骨と寛骨を触診して、荷重がかかったときに寛骨の前方回旋、すなわち骨盤のアンロックが生じないか。
  • 腰椎関節突起や棘突起を触診して、関連性のある方向のコントロール不良がないか。
  • 寛骨と大転子を触診して、大腿骨頭の前方変位や回旋のコントロール不良がないか。
  • 骨盤に対する胸郭の位置は適切か。
  • 大腿骨頭は、あらゆる運動で中心位置を保持できるか。
  • 膝に過剰な回旋や外内転がないか。
  • 足部の過度な回外・回内はないか。

最適な戦略のチェックポイント 過剰固定の回避

過剰固定の兆候は、

  • 胸郭の可動性低下
  • 肋骨の側方拡張低下
  • 脊柱と股関節の可動性低下

をきたすので、それを次の方法でチェックする。

胸郭の揺らし

両側肋骨外側面に手を当て、片手で側方への並進運動を作り、反対の手で反対側に並進運動が起きたか確認する。僅かな力で運動が起き、それは対照的でなければならない。

呼吸パターン

呼吸時の胸郭を観察する。両側もしくは片側で、肋骨の側方への拡張と過剰な上部胸郭の拡張、腹部の過剰な筋活動など望ましくない拡張パターンがないか確認する。

股関節の内旋/外旋

股関節の回旋制限は、筋活動の過剰を示す。

趾のテスト

趾が屈曲して握り込んでいる状態は、下腿の筋筋膜スリングが不均衡であることを示唆する。

深層筋と表在筋の協調における基本原則

リリース、アライメント調整、接続、動き(RACM)-誤った動作を修正するのに効果的なイメージやキューを用いて中間位とし、課題実践の前にコードキューを使って共同収縮を促す。

最初は低負荷から初めて運動コントロールを重視し、コードキューの接続を維持する。

持久力向上のため、10秒×10回×3セット

分節/関節のコントロール不良と表層筋の過活動に注意する。最適な戦力を獲得するためのチェックポイントを利用する。

安定した支持面から不安定な状況へと進めていく

意味のある課題から分解した要素を使ってエクササイズを考える

できるだけ早期に、機能的な課題を幾つかの要素に分解して練習し、日常的な機能的動作に深層筋共同収縮を組み込む

高負荷急速な活動が要求されるときは、まず低負荷低速でのコントロールを確実にし、一部の運動プログラムでのみ高負荷急速な活動を実施しつつ、低負荷課題も続ける

深層・表在筋システムの協調課題

胸椎〜骨盤帯/アライメントとコントロールを維持するためのコード・キュー

胸郭の伸展と右回旋がある場合「課題をしている間、右の胸郭下部を左のASISにつなぎ、そのままにしましょう」

胸郭の屈曲と右回旋がある場合「胸郭の左後ろを右のPSISをつなぐラインをイメージしてつなぎ、そのままにしましょう」

骨盤に左回旋がある場合「右のASISにピンが刺さってそれが骨盤右側をベッド上につなぎ止めているとイメージし続けましょう」

体幹と上肢の分離課題

膝立背臥位で、体幹は中間位にする。肩を直角に屈曲し、手は肩関節の上に挙げる。機能障害のあるレベルの腹横筋や多裂筋を触診し、キューを出す。動作中、呼吸を止めず、中間位を維持するよう支持する。

肘を曲げた状態から肩を動かさないようにしながら肘を伸ばしする。

肘を伸ばしたままバンザイする。

水平外転位から腕を伸ばしたまま体側に腕を降ろす。

ハーフロールの上で実施したり、手に重りを持って実施する。

体幹と下肢の分離課題/背臥位

膝立背臥位で体幹は中間位を保つ。機能障害のあるレベルの腹横筋や多裂筋を触診し、活動を確認する。動作中、呼吸を止めず、中間位を維持するよう支持する。動作中に大腿骨頭を中心に保てない場合は、まだ下肢への負荷運動ができないと判断し、覚醒を促すトレーニングを行う。

片脚を床で滑らせながらゆっくりと伸ばして曲げる。うまく出来れば、反対脚も同時に動かす。

片膝をゆっくり外に倒し反対側は動かさない。

90-90ポジションから、膝関節の屈曲角度を保ちながらゆっくり踵を30㎝降ろしたら、元に位置に戻す。降ろす高さや膝を伸ばすことで負荷を調整できる。さらにハーフロールの上で実施する。

体幹と下肢の分離課題/側臥位

側臥位で体幹を中間位とし、クラムシェルを行う。膝を一番高いところまであげたら同側の脚を持ち上げると負荷を増やせる。さらに、股関節を外転外旋したまま膝を屈伸する。

体幹と下肢の分離運動/腹臥位

枕を敷いた腹臥位で体幹を中間位とし、膝を屈伸する。できるようなら、股関節を外旋、内旋、膝伸展位で股関節伸展をさせる。

協調活動のための神経ネットワークの「覚醒」と構築

股関節の表層筋、とくに大腿筋膜張筋、大腿直筋、縫工筋、短内転筋群がリラックスする肢位(膝立背臥位で片足を枕や壁で支える)で、片側の腸腰筋、反対側の過活動股関節表層筋を触診する。あるいは鼠蹊部で大腿骨頭の位置をモニターする。側臥位や伏臥位で行うときは、片側の大腿骨頭、対側の股関節表層筋を触診する。

課題における努力感を確認することで、キューが有効であるか確認できる。

「大転子と大腿骨頸部を介して骨盤の中心まで紐が伸びてるのをイメージしましょう。大腿骨が股関節をやさしく圧迫するようひもを縮めるようにイメージします。ひもを股関節までやさしく引っぱり、次に椎骨を引き上げるように意識してみて下さい」

「自分の脚がリカちゃん人形の脚とします。誰かがその脚を骨盤からはずそうとしています。長軸方向にそっと抵抗してみましょう」

体幹と下肢の分離/更なるコントロールの促進

膝立背臥位で中間位を作る。脚を壁で支えて、股関節を70°屈曲位にする。

腰部骨盤帯深層筋共同収縮を促すキューと、股関節に負荷をかけたときに最適な動作を促すキューを組み合わせる。呼吸を止めないようにして、踵から順にゆっくり壁から脚を離す。負荷がかかりすぎるときは、セラバンドで下肢を部分的に支持してもいい。最終的には、脚がベッドより低く下げて股関節を完全伸展できるようにする。負荷をあげるには、ハーフロールを使う。

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